イベントレポート <後半>

代官山文学ナイト
ロバート・ハリス × 鈴木正文(GQ JAPAN 編集長)


日時:20181025
会場:代官山 蔦屋書店
代官山文学ナイト:ロバート・ハリス トークショー、ゲスト:鈴木正文、『JJ 横浜ダイアリーズ』(ロバート・ハリス著 講談社)刊行記念

 

 

 ▶︎前半からの続き 

 

海外と日本、その両方のカルチャー 

 鈴木 

すごく楽しみなんですよ
つまり日本文化を背負って外国でいろいろ発見するっていう時には日本文化の陰が投影されてる。戦後の世界秩序の名手であるアメリカのカルチャーの方がむしろ強くある中で、たまたま日本で横浜っていう都市で生まれて。 曇りのない、非常にオープンなマインドセットっていうのがあったと思うんですよね

 

 ハリス 
ただぼくアメリカでヒッピーになってアメリカのヒッピーが友達になるんですけど、みんなに聞かれるんですよ、日本のこと。禅とはなにかとか。

 

 鈴木 
日本から来たから

 

 ハリス 
そう。
でも、なんとなくの仏教の知識ぐらいしか知らなくて。それで、仏教の本を読みまくったんですよね。禅に関する本とか、鈴木大拙さんの本とか。

 

 鈴木 
そうだったんですね

 

 ハリス 
だからぼく、にわか日本文化エキスパートになりまして(笑)
その後さらに海外に行ったんで、そういう意味では。日本の内面的なものは持って海外のカルチャーに触れていったかたちです

 

 

偏見のないニュートラルさ 

 鈴木 
両方の文化が自分のなかで混在している部分もあるのかなと思うんですが、ダブルというかトリプルアイデンティティーになって放浪したっていう。そこが面白いところですよね。次回の放浪編、期待してます

 

 ハリス 
はい、期待していてください

  

 鈴木 
ある意味ではニュートラルになられるっていうことがあるじゃないかなと思うんですよね。いろんな文化があることを知ってるっていうのは。

 

 ハリス 
そうですね、
とくに横浜で育って中国人の友達がいたり、ハーフの友達、アメリカの友達とかいろんな友達がいたんで偏見とかなかったですね

 

 鈴木 
この本をお読みになられた方はお分りだと思いますが、すごくフラットですよね

 

 ハリス 
そうですね
人間は人間として、いいやつはいいやつとして。チャイニーズの不良のやつがいれば、日本人もいるし、それからアメリカ人も。

 

 鈴木 
特に、価値的な序列はぜんぜんなくて

 

 ハリス 
全くなかったですね 

 

 

人生の先輩として登場する男性「カブさん」 

 鈴木 
で、印象的な人が、ほら、英語を教わってた、カブさん。
なんであんなになんでも知ってるんですか、カブさんは 笑

 

 ハリス 
知らないです(笑)
あの人急に出てきたんですよ

 

 鈴木 
え、実際にいたんですよね?

 

 ハリス 
いや、あの人は完全にぼくのイマジネーションです。たぶんいまの僕の断片を背負ってる人ではあると思うんだけど、でもぼく彼みたいにストイックじゃないし、急に出てきてくれたんですよね

 

 鈴木 
すごく魅力的な人ですよね

 

  

今作を書くプロレスについて

 

 鈴木 
これ1冊かくのにどのくらい掛かったんですか?

 

 ハリス 
2年ちょっと掛かりましたね。
ちょこちょこ、調子がいいときは何ページも、調子が悪いと1ページくらいし書けない。あとは夜、ワインをのみながら書くこともありましたし。書くのはすごく楽しい作業でした。

 

 鈴木 
どんなふうに書き進めていったんですか?

 

 ハリス 
作家って2つのタイプがいると思うんですね。ほとんど全部構想を練って書くタイプと、書きながら考えていくタイプと。ぼくは後者のタイプで。どうなるかわからないまま書いていったんですよ。森に地図もコンパスも持たずに入る感じでした。

 

 

小説を書こうと思った理由は?

  鈴木 
なんで小説を書こうと思ったですか?

 

 ハリス 
ぼく17冊、自叙伝、エッセイ、紀行本など書いてきたんですけど、ずっと小説家になりたいっていうのが夢だったんですよ

 

 鈴木 
いつ頃から?

 

 ハリス 
もう大学生の頃から、ぼく小説が大好きで、小説ばっかり読んでたんですよ。
すごい読書家でした。
読書家の不良ってあんまりいないんですよ、
俺です(笑)
いつか小説家になってやるぞっていうのはずっと思ってました 

 

 

どういう小説家になりたかったか?

  鈴木 
どういう小説家になりたかったんですか? 

 ハリス 
ヘミングウェイとかヘンリー・ミラーみたいな、やっぱりぼくは実生活で自分が経験したことをベースに、そこからインスパイアして書くスタイルだと思ったんで。あと旅しながら書く人ですよね二人とも。

 

 鈴木 
チャンドラーとか?

 

 ハリス 
チャンドラーほどハードボイルドになれないんですよ、ぼく

 

 

どういう小説を読んで影響を受けてきたか? 

 ハリス 
あとぼくヘミングウェイが一番最初によんだ本だったんですよ。それまでは漫画しかよんでない少年で、学校の友達が「武器よさらば」をくれたんですよ。それでも半年くらい読まなくて、ベットルームに置いておいて。でその後読んだらハマっちゃいましたね

 

 鈴木 
英語で読んでたんですか?

 

 ハリス 
はい、英語の本は英語で読んでましたね。フィッツジェラルドとか読みまくりましたね

 

 鈴木 
ギャッツビーとかは出てこないんですね?

 

 ハリス 
おれ、ギャッツビーは嫌いなんですよ(笑)どっちかっていうとヘミングウェイのほうが好きなんですよ
チャンドラーに関していうと「ロンググッドバイ」、
「お前ヘミングウェイみたいだな」っていうところあるじゃないですか
フィリップ・マーロウの一番好きなところは、チャンドラーの鑑定ですけど、モノローグがすごくいいんですよ。

ハードボイルドって言われてるけど、けっこうセンチメンタルで。で自分のことちょっと懐疑的に思って、自分はかっこいいと思ってなくて。でも反体制派だったり、そういったエレメント全部ひめた男だったんで、ぼくにとっては結構かっこいい男でしたね。

 

 

いまだ昭和の匂いが残る横浜、六角橋

 鈴木 
いまも横浜にいるんですか?

 

 ハリス 
はい、同じ場所に住んでいます、六角橋の丘の上に。六角橋がぼくの故郷ですね。あそこまだ昭和の匂いがプンプンするところで

 

 鈴木 
横浜の変化っていうところでいうとどうですか? この頃('64)の横浜といまの横浜と。

 

 ハリス 
すごく活気のあるカオスっていうのはなくなりましたね。それはやっぱり米軍基地があって、まだまだ高度経済成長期の真っただ中で、まだすさんだところもいっぱいあって。あの頃は、黒澤明の映画「天国と地獄」の地獄の方で描かれていたような、ああいった感じが随分ありました。それでもコアにある、横浜のその好奇心とか、大人の寛容さとか。そういうのは今でもあると思いますね 

 

 鈴木 
そうなんですね

 

 ハリス 
あとは伊勢佐木町商店街。あそこなんかは未だに取り残されてるんですよ、時代に(笑)
なんか地方都市みたいになっちゃってるんだけど、あれはもうほんとに昔と変わってないんですよ

 

 鈴木 
へー

  

 ハリス 
あそこに行くと、ちょっとホッとするんですよ。特にみなとみらいから伊勢佐木町いくと「やっぱここだよな」って思いますよ(笑)

 

 

:::: 質疑応答 ::::
*当日は3つの質問が挙がりましたが、ここではそのうちの1つを抜粋してご紹介します。

◆質問
こんなに小説の主人公を無条件で「この子が好きだ!」と思えることって本当に滅多になくて、ここまで読者を惹きつける主人公の造形の仕方について、お聞きしたいです


 ハリス 
ありがとうございます。
彼はぼくと比較すると、ぼくよりもずっと優しい男だと思いますね。ぼくはもっととんがってて生意気でした(笑)
でも自分の人生をずっと生きてきて、人間が一番かっこいいのは、やさしい人間だと思うんですね。それを少し主人公に投影したかったんです。友達関係も優しさが溢れていますよね。そういう人物にしたいなという気持ちはすごくありましたね。

 


 

「JJ 横浜ダイアリーズ」(講談社)
https://www.amazon.co.jp/dp/4065130239

< あらすじ >
英国と日本のハーフの父と日本人の母を両親に持つクォーターの青年・JJ (ジェイジェイ) 高原は、横浜にあるインターナショナルスクールに通う高校2年生。自分がどれだけ強いのか、女の子の心をつかむにはどうすればいいのか、トライ&エラーの毎日。1964年、JJの身にとんでもない出来事がおとずれる。とびきりの体験やかけがえのない友人やガールフレンドなど、二度と戻らない貴重な青春を味わえるオンリーワン小説。