【前半】ロバート・ハリス × 鈴木正文(GQ JAPAN 編集長)

【前半】ロバート・ハリス × 鈴木正文(GQ JAPAN 編集長)

イベントレポート <前半>

代官山文学ナイト
ロバート・ハリス × 鈴木正文(GQ JAPAN 編集長)


日時:20181025
会場:代官山 蔦屋書店
代官山文学ナイト:ロバート・ハリス トークショー、ゲスト:鈴木正文、『JJ 横浜ダイアリーズ』(ロバート・ハリス著 講談社)刊行記念

  

 

 鈴木正文氏(以下、鈴木)
こんばんは、今日はよろしくお願いします。 

 ロバート・ハリス氏(以下、ハリス) 
こんばんは、よろしくお願いします。
僕ら、同世代なんですよね、1つ違うだけで

 鈴木 
はい、なので今日は各時代についての話もできるんじゃないかと思っています。
早速ですが、今回のこちら。もう皆さん読まれましたか?JJ 横浜ダイアリーズ」。

 

 

物語の舞台となっている「1964年」について 

 鈴木 
あらすじとしては、優子っていう女の人との恋愛が、物語の始まりから終わりまで出てくる。この物語の縦糸。いわばストーリーラインですよね。
そして横糸に、家族、友達、先輩などが出てくる。
その中でリアリティを担保しているのが、「1964年の横浜」という舞台設定だと思うんですが。

 

 ハリス 
そうですね
60年代っていうと激動って言われるけど、63年くらいまではまだ保守的な文化がそのまま継続してたんですよね。
そこから、ビートルズが出てきて、ロックンロールが出てきて、さらにヒッピーが。そしてベトナム戦争、、っていうかたちで動いていく。

そういう意味で、64年っていうのは時代的なポケットっていうか、はざまっていうか。激動の前の、まだ少し牧歌的なところもあるような。ちょうどぼくが16歳の時だったんです。

 

 

当時、横浜というのはどういう町だったか

  ハリス 
やはり特殊でしたね
僕なんかは不良とつるんでましたけど、横浜が世界で一番かっこいいとこだって思ってましたし。
その時まだ世界行ってないんですけど(笑)
東京は大きい町。
でも横浜に住んでて、東京に対して、コンプレックスもなかったし憧れもなかった。
原宿や六本木は行くと楽しかったですけどね。横浜は米軍基地があって、しかも居住区だったから、アメリカの普通の社会がある感じでした。
町には外人が溢れてて。
中華街って当時は半分くらいがバーだったんですよ。ちょっと特殊な日本にいたっていう感じですね 

 鈴木 
そうなんですね

 ハリス 
学校の中ではアメリカ文化とかビートルズの話を、外でて伊勢佐木町なんかを歩くと美空ひばりとか小林旭の音楽が流れてて。二つの世界を行き交ってた感じがしますね

 

 鈴木 
その頃の日本って、いろんなカルチャーが織り込まれているっていうところに、ある種の現代性がありますよね

 

  

インターナショナルスクールという環境について 

 鈴木 
父親がハーフでインターナショナルスクールに通っていたということですが、やはり特殊でしたか?

 

 ハリス 
そうですね、
意識はしていたし、本道をいってる日本人とは違うというのはありました。でもだからって差別を受けたわけじゃないし。
そういうのがあったのは、ちょっと前の時代だと思うんですよね。僕の時代は英語が重要視されていたし、英語も日本語もできるっていうのでちょっと特別な存在でしたね

 

 鈴木 
ぼくもおばあさんがドイツ人なんですよね

 

 ハリス 
え、そうだったんですか?
初めて聞きました


 鈴木 
東京の港区だったんだけど「あいのこ、あいのこ」って言われてましたよ

 ハリス 
あいのこ 笑
古いですね 笑
 

 

 

いまの時代について

 鈴木 
今まさに文化の、ある意味では変遷というか 

 ハリス 
グローバリズムっていう言葉は嫌いなんであえて使わないけど、でもそういった感じになってきてますよね

 

 鈴木 
これから今の若い人のルールというか、そういったものがスタンダードになっていくのかなっていうのはありますよね


 ハリス 
すごくたのしみです 

 

 

主人公の青年のキャラクターについて

 鈴木 
ところで、この作品の主人公はけっこう受動的じゃないですか

 

 ハリス 
そうですね、
ある魔性の21歳の年上の女性に会って、どうしても主導を握ることができない。
彼女のいいなりになってしまうっていうところは、いまの男性にちょっと似てるんじゃないかなと思います。草食系とか言われてて。女性の方が強いところあるじゃないですか。

 

 鈴木 
リーダシップを持てない、イニシアチブを持てないっていう主人公として設定されていますが、これはハリスさんがそういう人だったんですか?

 

 ハリス 
いや、相手によって全然変わりました
とくに若い時って、自分がだれなんだか全然分からないじゃないですか?
だからたとえば女性に対しても、この人には何でも言えてユーモアのセンスがあって話せるけど、でもこの人だと萎縮しちゃう、とかね。それをちょっと描きたかったっていうのもありました。

 

 

優子のモデルはいたのか?

 鈴木 
優子さんっていう人はとても魅力的に描かれていて、これはモデルになった人はやっぱりいるわけですか? 

 ハリス 
はい、いますよ
もっと激しい人で、もっとSMチックな関係だったので、ちょっとそれやると団鬼六になっちゃうんでやめようかなと思って

 

 鈴木 
その人は青学ですか?

 

 ハリス 
いや、ちがいます。
どこだか言わないですよ(笑)

 

 鈴木 
女子大?

 

 ハリス 
ううん

 

 鈴木 
社会人?

 

 ハリス 
早稲田(笑)

 

 鈴木 
(笑)
 やっぱり(物語の中と同じで)演劇とかやってて?

 

 ハリス 
いや、あれは創作です

 

 鈴木 
電話番号は教えてもらえなくて?

 

 ハリス 
うん、あれは本当で、毎週金曜日、ぼくは友達付き合いが急に悪くなって、家に帰って待ってました。まだ携帯がない時代だから、家に帰らないと電話に出られないんですよ

 

 鈴木 
じゃあその人はその時学生だったんですね。どこで出会ったんですか?

 

 ハリス 

え?ほんとの話ですか?(笑)
ほんとにYCACのパーティーで逆ナンパされて。
まぁベースにあるところは実体験が元になっているんですが、そこからはどんどん飛躍して、創作して書いていきました。

 

 

ベトナム戦争、世界情勢について

  鈴木 
その頃は背景としてベトナム戦争があって65年からだから、その前の時ですよね

 

 ハリス 
そうですね、これからどうなるんだろう、っていう感じでしたね

 

 鈴木 
で、ハリスさんの場合はお父さんが日本兵でしたよね

 

 ハリス 
はい、父親はジャパンタイムズで働いてたんですけど、憲兵隊がいて捕まって_。横浜の山下公園のすぐ裏にある収容所があったんですけど、敵国外国人として8ヶ月収容されて。

もう日本に帰化してたんだけど、帰化した証明書が見つからなかったみたいで。それで8ヶ月後に出てきて「なんだお前日本人だったのか」って。出てきたらすぐ今度は兵隊として召集されて、中国に従軍しました。

 

 鈴木 
その頃アメリカでは反対のことが起こってましたよね

 

 ハリス 
はい、日系の人がアメリカの収容所に入れられて、志願して、戦争に行ったんですよね。日系部隊。ヨーロッパ前線ですごい活躍して、たくさん亡くなったと言われていますね

 

 鈴木 

それに比べると日本でそういうある種中間的なポジションにいた人っていうのは欧米系ですよね。ごく少数だったわけですけど。何百人かはいたんですかね?

 

 ハリス 
いましたね
で船で交換で、収容所からアフリカの方に船がいって、そこで日本の捕虜と交換でアメリカに帰っていきましたね

 

 

三部作という構想

 鈴木 
その辺の話っていうのはたぶん、次作に出てくるんですかね?これ実は三部作のうちの一部だそうなので。

 

 ハリス 
はい、次作は60年代の終わりから70年代の始めで、放浪編になると思います。
ここでもちょっと伏線はってるんですけど、ぼくも実際にヒッピーになって世界を旅して、大学卒業してから18年間くらい世界を旅しちゃってるんで。
ヒッピー時代ってあんまり知らない人が多いんですよ。ビート世代は、アレン・ギンズバーグとかジャック・ケルアックとか作家が多かったんで、文献として残っているけど。
あれは50年代ですかね?

 鈴木 

そうですね、50半ばから後半くらいだと思います。

 

 ハリス 

ヒッピー時代ってあんまり知らない人が多くて、いいヒッピーの小説ってアメリカでもない。

リチャードブローディガンとかケン・キージーっていう人が少し書いてますけど、その時代を小説として書けばもっと感触として分かると思うんですよね

 

 
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